付き人こぼれ話

付き人こぼれ話
東蔵付人(2004.1〜2005.7)が楽屋話+αを綴ります。
素人感覚丸出しでお送りします。どうぞ、よろしくー♪
※役者さんのみ名前を書かせて頂きました。
※写真・コメント等の無断転用禁止※

プロローグ
  大学を出て編集業一筋でご飯を食べていた私。でも、いつも思うのが
 「歌舞伎がこんなに好きなのに、なんでココ(←歌舞伎座)で働いていないのぉ?!」ってこと。
 小学生の頃から母に連れられ歌舞伎座に足を運びました。母がイヤホンガイドのごとく、
 役者さんのプロフィールやストーリー展開etc……を私に耳打ち。それでも難しかったけど、
 舞台装置・衣裳・化粧などの魅惑的な美しさに目を輝かせておりました。

2003.12
 編集業を数年続けていた日々はそれなりに充実。だけどやっぱり、違うのよねー。
 ふと気になるのは、今月の歌舞伎座は!?、演目は!?、配役者は!?
 たまーに就業時間中の会社を抜け出し、幕見席で観劇したことも……。
 学校を抜け出す人は多くても、会社を抜け出すのはきっと私だけかもっ☆
 自分で縁を引き寄せて(引き寄せられて!?)、とうとうこの世界に来てしまいました♪

2004.1(歌舞伎座)
 歌舞伎座初出勤。1階から3階、揚幕、奈落、上手、下手…「まるで迷路」というのが歌舞伎座の初感想。
見るもの・聞くもの、全て新鮮で、それはそれは緊張の目の回る毎日。
 
 旦那(東蔵)が気持ちよく集中して舞台に出演するために、身の回りのお世話(掃除&洗濯、拵え等のお手伝い)などが
付き人の仕事の基本ですが、今月はお弟子さんが忙しいので、帽子(羽二重)&目つり〈鬘の下に被るもの)等を付ける補助や、
襟をとる(うなじを綺麗に白く塗る)のも私のお仕事。今月一番の緊張するお仕事(時間)です。

 今月は同じ加賀屋の魁春丈と同じ楽屋。魁春丈の付き人さんはとても気さくでよく気の付く、魁春丈を長年支えるベテランさん。
付き人のイロハを私に伝授してくださいました。謝辞としてここに記載致します!!ありがとー♪



2004.2(歌舞伎座)
 うちの番頭さんと歌昇丈の番頭さんと文楽を観に行きました(2/9)。生まれて2度目の文楽。
 演目はCプロ「仮名手本忠臣蔵」。『道行旅路の嫁入』は昨年12月に芝翫丈・福助丈他が、
 『山科閑居の場』は今年1月に団十郎丈・玉三郎丈・菊之助丈・勘九郎丈・新之助丈他が演じていました。
 『山科閑居の場』は楽屋で仕事をしながら、25日間いつもモニターでセリフを聞いていましたが、舞台は拝見していなかったので
人形でのこのシーンを拝見して、上記の役者さん方で繰り広げられたであろうシーンの想像が膨らみました。

 今月2度目の文楽。Bプロ『曽根崎心中』です。タイトルはよく聞くものの、ストーリーを観るのは始めて。
この演目は入手困難なプラチナチケットだそうで、この日(2/21)は菊之助丈も観劇していました。
さらに、歌舞伎座夜の部(2/23)を拝見した際に、隣の隣の席に菊之助丈の姿が。
今月は偶然にも2回、菊之助丈を劇場内で拝見しました。先月彼の『二人道成寺』を拝見し、月並みな表現ですが本当に美しく感動しました。
そんな勉強熱心な彼の舞台だからそこ『二人道成寺』に感銘を受けたのかも!!(←この感想が素人感覚丸出しなんです。ごめんなさい。)

 勘九郎丈は今月、新橋演舞場で『万年サーカス団』を上演。その付き人で俳優の“もとのもくあ”氏も出演。
彼が出るということで拝見した舞台は、思いの外(おっと、失礼)、心くすぐられる素敵な作品でした。
昭和(第二次世界大戦前後)という時代背景のせいか、ノスタルジックなストーリー展開に思わず込み上げるものが。


2004.3(歌舞伎座)
 歌舞伎界に来た時から「秀太郎丈の付き人さんと同姓同名!!」ということで、皆さんに早く名前(しかもフルネーム)を覚えて頂きました。
今月、待ちに待った秀太郎丈の歌舞伎座出演。その付き人さんにお会いできるということで、ちょっとドキドキ。
まずは秀太郎丈はじめ、そのお弟子さん方なども名前を覚えてくださり、とても親しみを持って接してくれました。
彼女のことは、やはり同じ名前を持っているので多少背負う運命も同じかも……ということで、どんな方なのか本当に気になりました。
実際お会いしたその方は私より(人生&付き人暦に至るまで)大先輩。そしてそして、とても上品でお綺麗で、
彼女と同姓同名ということをとても光栄に思いました!!ただ違う点といえば、彼女は大変なお嬢様だということです。
身に付けるものや所作や雰囲気がまるで私とは違う。見習わねば!!

 上方の役者さんらしいおちゃめな遊び心を少し書かせて頂きます。こぼれ話ってことで大目に見てくださいませ。
 今月夜の部“義経千本桜・すし屋”にて、出番のために楽屋の廊下を急ぐ秀太郎丈とそのお弟子さん。いつになくニコニコと近づいてきます。
私がおもわず目を奪われたそのワケは……美しい“小せんさん”の顔がまるでドラえもん☆もちろん私は絶句&大爆笑
「○○ちゃん(←私の名前)を笑わせよう思うて。」と、鼻の頭を赤く塗りヒゲまで描いて、無邪気な笑顔で舞台へ向かうんです。
皆様お察しの通り“権太が梶原に、我が妻子を若葉の内侍と六代君の身代わりに差し出す” あの名場面に出る直前。
“小せんさん”は布で猿ぐつわをされています。あの涙を誘うシーンのその裏(猿ぐつわの下)に、こんな遊び心が隠れてました。
名誉の為に、誤解のないように記させて頂きますと、舞台はもちろん真剣そのもの、何度拝見しても心に染み入るお芝居でした!


2004.4(金丸座)
 今月は始めての旅(地方公演のこと)です。しかも、日本最古の芝居小屋といわれ、国指定重要文化財の金丸座。
それだけでもわくわくです。日本の古い建築など(知識はまったくないのですが)は機能的で簡素化された現代建建築より余裕の
ある職人技があちらこちらに見られて楽しいですよね。
 金丸座はじめ、金毘羅宮や琴平の街並みにそんなものが見られることを期待して……いたのに、
意外と忙しく、じっくり物見遊山出来ませんでした。
 ここ金丸座の舞台と楽屋はまさに壁一枚。舞台も舞台そでも楽屋も廊下も、どちらかというと狭いです。
楽屋で大声を出すと客席まで届いてしまいます。水回りは離れにあり、お芝居が繰り広げられている舞台のそのそでを、
役者さんが待機しているその後ろを、そそくさと抜けて、仕事をしなければなりません。
皆ぶつからずに、お芝居の邪魔をせずに無事に終えたことは奇跡かも。

 今月、面白かったのは着付け。若旦那の着付けは衣裳さん(後担当)とお弟子さん(前担当)でします。
“再桜遇清水”はとにかく忙しい演目(役者さんが忙しければ忙しいほど、お客様が喜んでくださるのも事実)。
役者さんは狭い廊下を走り回ってハードに頑張っております。若旦那しかり、同じ楽屋の歌昇丈もその一人。
で、そのお弟子さん蝶之介丈もショーのモデルより着替えているのではないかと思うほど。
着付けに来る度に違う衣裳で「とんぼ、あと○○回!」とうれしそうに楽屋にやって来ます。
(1公演毎のとんぼ回数×公演回数を計算し、消化する度に励み!?にしているみたい。
でも、残りのとんぼの回数を聞くと先は長いですね。)
その衣裳はたしか、浴衣、黒衣、水奴(“まかしょ”みたいな白衣裳)、捕手。それが1日2回、さらに昼の部では獅子の後ろ足もです。
 その時に思ったのが、お弟子さん方は本当にすごい!ということ。旦那様の身の回りのお世話や楽屋の管理をこなして、
自分自身も舞台にきっちり出演。付き人は舞台に出ませんからね、その働きぶりには頭が下がります!!
頑張っている皆様の中で私も働けるこということは本当に誇りです。

◆◇◆おまけPohot◆◇◆ 昼の部 『お祭り』 若い衆 & 金丸座を支える立役者(楽屋の一切を切り盛り)               
                                                       ※写真・コメント等の無断転用禁止※

◆東志二郎丈◆              ◆梅之丈(高砂屋)&蝶之介丈(萬屋)◆   ◆山本さん◆ 
 うちの自慢のアイドルとしちゃんです♪   舞台では顔を出せなかったお二人。         金丸座の看板娘。                                       ここでお披露目致します。凛々しいでしょ!?    大変お世話になりました!


◆金丸座の正面外観◆

◆山つつじが鮮やかな金丸座の裏手◆        ◆今月の歌舞伎絵◆
  実は楽屋棟。洗濯物が目印です!


2004.5(歌舞伎座)
楽屋には人が溢れておりました。廊下にいるだけで人に酔う・・・・・・。初日・千秋楽は特に賑やかで華やか。
さすがは海老蔵襲名興業☆

今月の相部屋はおもだか屋の段四郎丈。この世界に入る前はおもだか屋さんをよく拝見していたので、
何だかうれしかったです。(←だから、素人感覚丸出しって言ったでしょ!?)
若旦那段四郎丈が楽屋に揃ったとたん、拵え中〜着付中〜出番の間際までずーっとお話が尽きず
お二人ともにとても楽しそうでした。
ある日、段四郎丈は数十年前に若旦那も出演した『おもだか会会員の集い』で上演の
“跳組(はねぐみ)公演 宝塚過激(たんからづかかげき) 風渡艫荷去離奴(かぜもろともなさけのさりじょう)”の
プログラムを持ってきてくださいました。タイトルからして面白いでしょ!?内容も写真も宝塚仕様のプログラムのパロディ。
私もお借りして笑いをこらえながら熟読していると、段四郎丈にはすっかり宝塚ファンと思われてしまいました……。
段四郎丈の付き人さんはとてもピュアな雰囲気のかわいらしい方で旦那方に負けないくらい色んなお話をさせて頂きました。
楽屋はとても和んで良い感じでした。また、ご一緒できたらいいな♪
                                                      ※コメント等の無断転用禁止※


2004.6(博多座)
博多は太る……という説がこの業界では浸透しています。実際、その通りでございました。
中州屋台はもちろん安くて美味しい様々なものが溢れ、キーワードだけ記載させて頂きますと……
ビビさん(西洋料理)、黒川さん(大ヤリイカの刺身等)、テツナベさん(ぎょうざ)、
ちんやさん(すきやき)、粋恭さん(やきとり)、やまちゃんさん(長浜ラーメン)、しずえさん(フランス屋台)etc……
とても個性的で美味しいお店ばかりです。
楽屋ではおいなりさんを何度か頂きました。東京と違う点は細長い俵型で、お揚げがモチモチしているうえ、
わさびがピリリときいている。小さめのしょうがコロンと丸ごと添えられています。
後を引く美味しさとはこのことでしょうか。食べ出すと止まりません。


今月は私の誕生日月(東志二郎さんと一日違い)ということもあり、若旦那はじめ、親しくなったお弟子さん方、付き人さん方……
皆様にお食事に誘って頂いたり、プレゼントを頂いたり、お祝いのお言葉をお掛けくださったりと嬉しいことがたくさんありました。
例えば……勧進帳・四天王に出演される間際、高麗蔵丈に「お誕生日を祝して、舞台に立ちます。」と言って頂き、また
お江戸みやげ・お紺の孝太郎丈には(私、実年齢より若く見えるそうで⇒)「○○さい〜!?詐欺師だなぁ」と言って頂いたり……。
皆様ありがとー☆今年の誕生日は絶対に忘れません♪

◆◇◆おまけPohot◆◇◆ 楽屋見舞お裾分け♪ ☆ありがとうございました。
                                                      ※写真・コメント等の無断転用禁止※


 どれもこれも、本当に美味しゅうございました。こんな感じで今月は魁春丈に随分養って頂きました。


◆今月の歌舞伎絵―登場人物一枚絵◆   ◆東京ではお目にかかれない、わらびもちの屋台◆
巨大な額。個々の絵はロビーにありました。 楽屋の窓から激写☆一日に数回流しています。
                            タピオカの大きいサイズぐらいで、ひんやりと冷たく美味!


2004.6〜7(巡業東コース)
 二代目魁春襲名披露で初の巡業です。巡業は毎日違うホールを巡り、1日2回公演します。
若旦那は全演目に出演、お弟子さん方も若旦那と一緒に最後の演目まで出演することから
のんびり屋の私は多くの方々から心配をされていました……。何をかと言いますと、開場が毎日変わる
ので化粧前など毎日出しては片付けるの繰り返し。それを手早く行わないと、移動のバスや新幹線などに
乗り遅れる……というわけです。実際、始まってみると、若旦那がまず素早く身支度を整えて下さり、さらに
お弟子さん方も素早く着替えて楽屋に来て下さるので何とか乗り遅れずに済みました。ホッ。
 東コースでは北海道へも行きました。その移動日に時間があったので、ちょこっと観光。その他のエリアも
精力的に観光&地場産のものを食べつくしました。その全てが美味しかったことは言うに及びません。

◆◇◆ おまけPHOTO ◆◇◆

 ◆北海道・札幌 時計台◆               ◆北海道・小樽 海鮮丼◆
 小さい小さいといいますが、☆(星)がポイント    食べきれないこの量に圧倒。地ビールと一緒に。
のキュートで立派な建築物です。           この後、札幌・だるま食堂でジンギスカンを魁春さんの付き人さんに
                               ご馳走になりました☆この日は4食、そりゃ太る。ごちそうさまでした。


 ◆北海道・小樽◆ 黄昏時の小樽運河            ◆北海道・小樽◆ ゆうじろーが見えますか?!小樽駅


 ◆秋田・秋田市の市場◆ 
 この時期の旬「岩牡蠣」。大きいのに安い新鮮な岩牡蠣。無理言ってその場で食べさせて頂きました。牡蠣にかけて下さっている
タレは下関から取り寄せたという「ふくのタレ」。この岩牡蠣は播磨屋の付き人さんにご馳走になりました。ありがとうございました。
 夜は播磨屋・萬屋・加賀屋の同世代のお弟子さん方と時期ではないと断る亭主に無理矢理「きりたんぽ」を作って頂き食しました。
この時期お薦めの「しょっつる」も食べました。そして吉六丈(播磨屋)が秋田音頭を熱唱したら、亭主は「うまいもんだねぇ」と
ニコニコ顔。とても楽しく美味しい晩餐でした。秋田では結構無理ばっかり言たなぁ。まあ、旅の恥はかきすてということで……。


2004.8(休演月)
◆◇◆ 東蔵・玉太郎を囲む会 ◆◇◆
◆◇◆ 稚魚の会 ◆◇◆


2004.8〜9(巡業西コース) ※写真・コメント等の無断転用禁止※
 今回の巡業(東西)の座組みは今年4月のこんぴら歌舞伎でも一緒だったメンバー。皆とさらに仲良くなりました。
では幕内、楽屋の様子をスペシャルPHOTOとともに紹介します。


◆ 魁春トラック ◆  
 このトラック2台で大道具・小道具・化粧前等のボテ・皆のトランク全てを詰め込み運びます。
かっこいいトラックです!!なのにボケた写真でごめんなさい……。


◆ 搬入と搬入待ちの風景 ◆ 
 トラックから荷物をトラックの運転手さんやホールのバイトさんが楽屋に運びます。
搬入が済むまで邪魔にならないように外で待つみんな。写真ボケててごめんなさい。



◆ 楽屋の廊下風景 ◆ 
 廊下でボテを開けて荷物を並べます。お弟子さんや付き人さんたちが廊下で旦那方の拵えを手伝うべく待機しています。


◆ ケイタリングの芸術系コップ ◆ 
どの開場でも廊下にドリンクやお菓子等のケイタリングが出ます。
紙コップにまず自分の名前を書きますが、個性的で芸術的な(?!)デザインが生まれます。これらの紙コップはさて誰のでしょー。


◆ 舞台裏の高い高い物干し場 ◆
 
ここは舞台裏。すぐ左手には舞台がセッティングされています。 天井にぶら下がっているこれらは、大道具さんの洗濯物です。


◆ 誕生日を祝おう ◆ 
 巡業先で誕生日を迎えるとみんなでお祝いをするのが吉例。さて本日、誕生日を迎えるのは……。
梅之(高砂屋)がこっそりケーキにロウソクをともして、こっそり楽屋へ。


 ロウソクを吹き消した本日の主役は蝶之介丈(萬屋)でした!おめでとーございます♪
料理上手な梅之丈セレクトのチョコケーキはさすが美味。


◆ 花四天のゆかいな人々 (今回の座組みメンバーは皆、「中村」です。)  
 左写真:只今着付け中なのは吉二郎丈(播磨屋)・左と「ムッシュ」が愛称の梅二郎丈(高砂屋)・右。 
       後ろに見えるのが若き衣裳さんの志村嬢。 
 中写真:面白いポーズをありがとー。みんなカメラを向けると何かしてくれます♪役者だからか、やっぱり“ゆかいな”……だからか?!
       吉二郎丈・左、春之助丈(加賀屋)・中、東志二郎丈(加賀屋)・右。彼らの楽屋も笑いが絶えません。
 右写真:アップはうちのとしちゃん・東志二郎丈(加賀屋)です。その後ろは吉六丈(播磨屋)。


◆ 円陣 ◆ 
 揚幕から花道へ出陣前の円陣です。
揚幕から花道へ向かう前「よし、勘平を倒してくる!」(吉六丈)など気合を入れて向かうのが、毎回楽しかったなぁ。
左から、梅之丈・東志二郎丈・吉六丈・蝶之介丈・春之助丈・梅二郎丈・吉二郎丈(ここに写っていませんが、蝶三郎丈(萬屋)
もいます)。普段の“ゆかいな”ぶりはどこへやら、舞台の上では皆、凛々しくきりりとかっこいいんです。